外国人料理人の【技能ビザ】取得方法 | 条件・申請手続き完全ガイド

1. 「技能」の在留資格の概要と対象

「技能」の在留資格は、外国で培った特殊かつ熟練した技能を持つ方が日本で働くための資格です。

特に、この資格は日本にはない、または珍しい料理かつ熟練した技術を持つ外国人料理人を対象としています
例えば、本格的なタイ料理やイタリア料理、フランス料理などの専門家がこれに当たります。
今まで磨いてきた技術を日本の飲食店や高級ホテルなどで、その腕を振るうことができます。

この在留資格の特徴は、単なる料理人ではなく、高度な専門性や熟練した技術を持つ人材を求めていることです。日本の食文化をより豊かにする役割も期待されています。

2. 在留資格取得に必要な条件

「技能」の在留資格を取得するには、いくつかの条件を満たす必要があります。

2.1 実務経験年数

最も重要な条件の一つが実務経験です。原則として、10年以上の実務経験が必要です。ただし、この中には料理の専門学校などで学んだ期間も含めることができます

例えば、料理学校で3年間学び、その後実際の飲食店で7年間働いた場合、合計10年の経験として認められます。

2.2 熟練した特殊な技能の要件

単に長く働いているだけでは不十分です。

  • 外国で考案された料理や調理法
  • 熟練した能力がないと従事できない
  • 日本では特殊なもの

例えば、本場のピザ職人や、特殊な中華料理の技術、最近だとインドカレー屋さんなどが該当します。
考案されたのが海外であっても日本に深く根差している料理、例えば「ラーメン」などはこの技能の在留資格には該当しない点にご注意ください。

2.3 報酬基準

もう一つ重要な条件があります。それは日本人と同等以上の給料をもらうことです。 これは、安い労働力として外国人を雇うことを防ぐためです。

例えば、同じレベルの日本人シェフが月給30万円もらっている場合、あなたも少なくともそれと同じかそれ以上の給料をもらう必要があります。

3. タイ国籍(料理人)の方への特別規定

タイ料理の料理人については、特別な規定があります。これは日本とタイの経済連携協定(EPA)によるものです。

タイ料理人の場合、以下の条件を満たす必要があります

  • 5年以上のタイ料理の実務経験があること
  • タイ労働省が発行する初級以上の技能水準に関する証明書を持っていること
  • 申請前の1年間、タイでタイ料理人として妥当な報酬を得て働いていたこと
    *妥当な報酬とはタイ情報技術通信省国家統計局が公開しているその年の国内全産業の平均賃金を超える額又は同等程度をいいます。

これらの条件を満たせば、他の国籍の料理人よりも比較的簡単に「技能」の在留資格を取得できる可能性があります

4. 「技能」在留資格での活動範囲

「技能」の在留資格を持つと、契約した会社や店で、専門の料理人として働くことができます。ただし、注意点もあります。

  • 契約した仕事の内容に従って働く必要があります。
    例えば、イタリア料理の専門家として来日した場合、突然中華料理で働く事は認められません。また、急に貿易会社へ転職する事も認められません。
    このようなケースでは「契約機関に関する届出」を提出する義務があります。更に転職先で働けることを証明するための「就労資格証明書交付申請」を行います。
  • 副業は原則として認められません
    メインの契約機関(会社やお店)以外で料理の仕事をする場合は、事前に資格外活動許可が必要です。
  • 料理以外の仕事をすることはできません
    例えば、レストランの経営や管理業務など料理とは関係のない仕事をすることは認められません。
    店舗の経営等は在留資格を「経営・管理」に切り替えないといけません。

これらの規則を守りながら、日本で自分の料理の腕を振るうことができます。

5. 在留資格申請の手続き

5.1 必要書類

申請には以下のような書類が必要です。

ただし、契約する会社の規模や状況により提出する書類の数が大きく異なります。
詳細は入国管理局の専用ページをご覧ください。

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 顔写真(申請前6か月以内)
  • 返信用封筒(切手貼付、結果の送付に使われます)
  • 履歴書(料理の経験を詳しく書いたもの)
  • 実務経験を証明する書類(在職証明書など)
  • 従事する業務の内容を証明する所属機関の文書(雇用契約書など)
  • 会社の情報(会社案内や登記簿謄本など)

5.2 実務経験の証明

技能ビザ取得における実務経験の証明は、申請者自身が責任を持って行う重要なプロセスです。
単に申請書に経験年数を記載するだけでは不十分で、具体的な証拠が求められます

主な証明方法は、過去の勤務先から発行された詳細な在職証明書の提出です。
この書類には、雇用主の基本情報や申請者の職務内容、勤務期間などが明記されている必要があります。

入国管理局は、提出された証明書の真偽を確認するため、元の雇用主に直接連絡を取ることがあります。
そのため、申請者は現在も存続している企業からの証明書を入手することが望ましいです。

廃業した企業からの証明書取得は困難であり、そのような経験は実質的に認められない可能性が高くなります。

5.2 申請の流れ

1. 日本の入国管理局に必要書類を集め申請
申請に必要な書類が多岐にわたる為、速やかに書類の収集を行います。
雇用主や申請取次資格を有する行政書士等が在留資格認定証明書を申請します。
2. 外国にいる本人に送付
在留資格認定証明書が発行されたら証明書を外国にいる本人に送付します。
3. ビザの申請
在留資格認定証明書を持って自国の日本大使館でビザを申請(フィリピンなら在フィリピン日本大使館)
4. 日本へ入国
ビザと在留資格認定証明書を持って空港で手続きをします。
この時、3か月以上の中長期滞在者へは「在留カード」が公布されます
5. 住居地の届け
住んでいる地域の市役所へ上陸後14日以内に住居地の届け出を行います。

住居地の届け出は出入国管理及び難民認定法第19条の7第1項で規定されており、届け出義務違反にならないようにして下さい。

6. 在留中の注意点

日本で働き始めた後も、いくつか気をつけるべき点があります:

  • 在留期限を守ること:最初は1年や3年など、期限が決まっています。更新を忘れずに。
  • 住所が変わったら報告すること:引っ越しした場合は、14日以内に新しい住所を届け出る必要があります。
  • 在留カードは常に携帯すること:16歳以上の方は、外出時に必ず在留カードを持ち歩きましょう。
  • 仕事を変える時は許可が必要:違う会社で働きたい場合は、事前に許可を得る必要があります。

これらのルールを守ることで、問題なく日本での生活を続けることができます。

7. 外国人料理人の技能ビザに関するよくある質問

技能ビザで家族を日本に呼ぶことはできますか?

はい、可能です。配偶者と子供は「家族滞在」のビザで日本に来ることができます。
ただし、あなたが十分な収入を得ていて家族を養うことができると証明する必要があります。

技能ビザで副業はできますか?

原則として、技能ビザでの副業は認められていません。ただし、本業の妨げにならず、技能と関連がある場合に限り、「資格外活動許可」を取得すれば可能になることがあります。必ず事前に入国管理局に相談しましょう。

技能ビザでホール作業をしてもいいですか?

技能ビザは熟練した技能を有する者に与えられる在留資格であり、技能ビザで日本に呼びホール作業をさせることは出来ません。ホール作業は日本人や資格外活動許可の留学生、身分系のビザを持つ人を採用しましょう。

技能ビザから永住権を取得することは可能ですか?

はい、可能です。通常、日本に10年以上住んでいること、うち5年以上は就労ビザ(技能ビザを含む)で滞在していることが条件となります。

8. まとめ

「技能(調理師)」の在留資格は、高度な料理の技術を持つ外国人が日本で活躍するためのチャンスです。10年以上の経験や特殊な技能が必要ですが、条件を満たせば日本で自分の腕を振るうことができます。 ただし、申請手続きや在留中のルールなど、守るべき点も多くあります。これらをしっかり理解し、正しく手続きを行うことが大切です。

日本の食文化に新しい風を吹き込む、そんな素晴らしい機会です。ぜひ、自分の技術を活かして日本で成功を収めてください。

なお、在留資格に関する規則は変更されることがあります。最新の情報は、必ず出入国在留管理庁の公式ウェブサイトや、専門家に確認するようにしましょう。