【受け入れ機関必読】特定技能外国人受け入れ機関自身の基準 2/4
特定技能外国人の受け入れには、13項目の厳格な基準への適合が求められます。これらの基準は、外国人材と企業の双方が安心して働ける環境を整えるために設けられたものです。労働法令の遵守や適切な雇用管理はもちろん、保証金徴収の禁止や支援費用の企業負担など、外国人の権利を守るための要件も含まれています。本記事では、企業が特定技能外国人を適切に受け入れるために必要な基準を、具体例を交えながら詳しく解説。実務担当者が押さえておくべきポイントを網羅的に紹介します。
- 1. 特定技能外国人を受け入れる企業 "自体" が満たすべき基準
- 2. 【詳細解説】受け入れ機関が満たすべき13の項目
- 2.1. 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
- 2.2. 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
- 2.3. 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
- 2.4. 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
- 2.4.1. ① 関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由
- 2.4.2. ② 実習認定の取り消しを受けたことによる欠格事由
- 2.4.3. ③ 出入国または労働に関する法令に関し不正行為を行なったことによる欠格事由
- 2.4.3.1. 1. 外国人に対する暴行、脅迫または監禁する行為
- 2.4.3.2. 2. 外国人の旅券または在留カードを取り上げる行為
- 2.4.3.3. 3. 外国人に支給する手当または報酬の一部または全部を支払わない行為
- 2.4.3.4. 4. 外国人の外出その他私生活の自由を不当に制限する行為
- 2.4.3.5. 5. その他、外国人の人権を著しく侵害する行為
- 2.4.3.6. 6. 不正行為の隠蔽
- 2.4.3.7. 7. 保証金の徴収
- 2.4.3.8. 8. 違約金の定め
- 2.4.3.9. 9. 届出の不履行または虚偽の届出
- 2.4.3.10. 10. 報告徴収に対する妨害等
- 2.4.3.11. 11. 改善命令違反
- 2.4.3.12. 12. 不法就労者の雇用
- 2.4.3.13. 13. 労働関係法令違反
- 2.4.3.14. 14. 技能実習制度における不正行為
- 2.4.4. ④ 暴力団排除の観点からの欠格事由
- 2.4.5. ⑤ 特定技能所属機関の行為能力・役員等の適格性に係る欠格事由
- 2.5. 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
- 2.6. 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
- 2.7. 支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと
- 2.8. 労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで、適当と認められる者であるほか、派遣先が①~④の基準に適合すること
- 2.9. 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること
- 2.10. 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
- 2.11. 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
- 2.12. 分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)
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【2024年保存版】特定技能所属機関の4つの基準と3つの義務
2024年現在最新|特定技能外国人を受け入れる企業が満たすべき4つの基準(雇用契約・受入れ機関の適格性・支援体制・支援計画)と3つの義務(契約履行・支援実施・行政届出)について解説。要件の詳細と注意点を外国人ビザ専門の申請取次行政書士がわかりやすく説明します。
4つの基準『詳細解説』
特定技能外国人を受け入れる企業 "自体" が満たすべき基準
外国人材を特定技能で雇用する際の重要な基準の一つに「受入機関適合性」があります。この中でも特に重要なのが「契約適正履行確保基準」です。この基準は、外国人材と企業の双方が安心して働ける環境を整えるために設けられました。法務省は、企業が特定技能外国人を適切に受け入れられるかを判断するため、13項目の具体的な基準を定めています。これらの基準を満たすことで、企業は特定技能外国人を適法に雇用することができます。
- 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
- 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
- 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
- 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
- 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
- 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
- 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
- 支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと
- 労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで、適当と認められる者であるほか、派遣先が①~④の基準に適合すること
- 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること
- 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
- 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
- 分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)
【詳細解説】受け入れ機関が満たすべき13の項目
労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
特定技能外国人を雇用する企業は、労働法や社会保険、税務に関する法令を確実に守る必要があります。具体的には、労働基準法に則った雇用契約の締結、労災保険や雇用保険への加入、保険料の適切な納付が求められます。また、外国人材の紹介を受ける際は、認可された職業紹介事業者を利用しなければなりません。
社会保険については、企業の形態に応じて健康保険・厚生年金保険、または国民健康保険・国民年金への加入と保険料の納付が必要です。万が一、保険料の未納がある場合でも、出入国在留管理局の指導に従って納付手続きを行えば、法令を遵守しているとみなされます。
税務面では、法人・個人事業主それぞれの立場に応じて、国税(所得税、法人税、消費税など)と地方税を適切に納付することが求められます。特に、外国人従業員の個人住民税を源泉徴収する場合は、確実な納付が必要です。
なお、これらの法令違反は重大な問題となり、違反が発覚した場合、最大5年間にわたり特定技能外国人の受入れが認められなくなる可能性があります。そのため、各種法令の遵守と適切な手続きの実施が極めて重要です。
1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
特定技能外国人を雇用する際には、既存の従業員の雇用を適切に維持していることが重要な要件となります。
具体的には、特定技能外国人の雇用契約を結ぶ1年前から、同じ種類の仕事に従事している正社員を意図的に退職させていないことが求められます。これは契約後も同様に継続して求められる条件です。ここでいう「既存の従業員」とは、フルタイムで勤務する日本人従業員、および在留資格を持つ外国人従業員を指します。パートタイムやアルバイトの従業員は含まれません。
「意図的な退職」とは、以下のような状況を指します。これらに該当する退職者が1名でもいる場合、特定技能外国人を受け入れることはできません:
- 経営上の理由による希望退職募集や退職勧奨(ただし、自然災害や感染症の影響など、企業の努力では避けられない場合を除く)
- 賃金の引き下げや遅配、過度な残業、採用時の条件との相違など、労働条件の重大な問題を労働者が判断したもの
- 職場でのハラスメントなど就業環境の重大な問題による退職
なお、このような退職者が発生した場合は、所定の届出が必要となりますのでご注意ください。
1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
事業者の皆様が特定技能外国人を雇用する際は、外国人従業員の適切な労務管理が重要な要件となります。
特に、雇用する外国人従業員が失踪するような事態を防ぐことが求められます。具体的には、特定技能外国人の雇用契約締結前1年間および契約締結後において、企業側の不適切な対応が原因で失踪者を出していないことが必要です。
ここでいう「外国人従業員」には、特定技能外国人だけでなく、技能実習生など、企業が受け入れているすべての外国人従業員が含まれます。企業側の「不適切な対応」とは、約束した給与の未払いや支払遅延、法令で定められた支援計画の不履行などを指します。このような法令違反や基準に反する行為があった期間中に、たとえ1名でも失踪者が出た場合、特定技能外国人を新たに受け入れることはできません。
なお、このような状況を回避するために別会社を設立しても、実質的に同一の企業とみなされる場合があります。企業には、適切な雇用契約の履行に加え、外国人従業員からの相談に真摯に対応し、安定した生活と就労環境を確保することが求められます。
万が一、外国人従業員が失踪した場合は、速やかに「受け入れ困難に係る届出」を行う必要があります。
欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
特定技能外国人を受け入れようとする企業は、一定の欠格事由に該当していないことが必要です。これらの欠格事由は、企業の信頼性と外国人労働者の権利を守るために設けられています。
欠格事由には以下のように大別されます。
- 関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由
- 実習認定の取り消しを受けたことによる欠格事由
- 出入国または労働に関する法令に関し不正行為を行なったことによる欠格事由
- 暴力団排除の観点からの欠格事由
- 特定技能所属機関の行為能力・役員等の適格性に係る欠格事由
① 関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由
関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由として、以下の処分を受けた後5年を経過していない場合は、特定技能外国人を受け入れることができません:
- 禁錮以上の刑に処せられた場合
- 出入国管理法や労働関連法に違反し、罰金刑を受けた場合
- 暴力団関連法令や刑法違反により罰金刑を受けた場合
- 社会保険・労働保険に関する事業主としての義務違反で罰金刑を受けた場合
また、過去に技能実習生を受け入れていた企業が実習認定の取り消しを受けた場合、その取り消し日から5年間は特定技能外国人を受け入れることができません。この規定は、取り消しを受けた企業の役員だった方にも適用されます。
なお、ここでいう「役員」には、正式な役職者だけでなく、相談役や顧問など、実質的に企業の運営に強い影響力を持つ方も含まれます。
② 実習認定の取り消しを受けたことによる欠格事由
企業が技能実習制度を利用する中で、実習認定が取り消されたことがある場合、その取消日から5年間は特定技能外国人を受け入れることができません。この制限は、単に企業だけでなく、取り消しを受けた当時の役員にも適用されます。
ここで重要なのは、「役員」の定義です。この制限は登記簿に記載された正式な役員だけでなく、企業の運営に実質的な影響力を持つ人物にも適用されます。具体的には以下のような方々が対象となります:
- 業務を執行する社員
- 取締役
- 執行役やこれらに準ずる者
- 相談役や顧問など、役職名に関わらず実質的な経営判断に強い影響力を持つ方
③ 出入国または労働に関する法令に関し不正行為を行なったことによる欠格事由
特定技能雇用契約を締結する際、過去5年以内に出入国・労働関係法令に関する不正行為等を行った企業は、特定技能所属機関になることはできません。以下に該当する行為は、特定技能制度における重大な違反とされています。
1. 外国人に対する暴行、脅迫または監禁する行為
外国人に対して暴行、脅迫または監禁を行うことを指します。この行為については、当該行為によって刑事罰に処せられているか否かは問われません。特定技能所属機関として外国人に対する人道的な対応が求められています。
2. 外国人の旅券または在留カードを取り上げる行為
外国人の旅券や在留カードを、その意思に反して保管することを指します。特定技能所属機関が失踪防止を目的として保管する場合も違反となります。「本人の便宜のため」「任意に」「本人の依頼により」として依頼書や承諾書を提出させて預かる例が見られますが、これら書類の提出自体が本人の意思に反する場合が多く、不正行為として判断される可能性が高いとされています。
3. 外国人に支給する手当または報酬の一部または全部を支払わない行為
外国人に対し、手当または報酬の一部または全部を支払わないことを指します。不正行為の判断は、不払金額、不払期間、事業主の認識等を総合的に勘案して評価されます。また、食費・住居費等を天引きしている場合でも、天引きしている金額が適正でない場合には、本規定に違反する可能性があります。
4. 外国人の外出その他私生活の自由を不当に制限する行為
外国人の外出、外部との通信等を不当に制限することを指します。具体的には、携帯電話を没収するなどして外部との連絡を遮断するような行為が該当します。外国人の基本的な私生活の自由は保障されなければなりません。
5. その他、外国人の人権を著しく侵害する行為
人権侵害の被害を受けた旨の申告があり、人権擁護機関において人権侵犯の事実が認められた場合や、特定技能外国人の意に反して預貯金通帳を取り上げる行為、強制的な帰国を強いる行為などが該当します。また、職場におけるパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタニティハラスメント)なども、この人権侵害行為に含まれます。
6. 不正行為の隠蔽
外国人に係る出入国若しくは労働に関する法令に関して行われた不正若しくは著しく不当な行為に関する事実を隠蔽する目的、またはその事業活動に関し不正に外国人に在留資格認定証明書の交付、上陸許可の証印若しくは在留資格変更許可等を受けさせる目的で偽変造文書等を使用または提供する行為を指します。例えば、在留資格認定証明書交付申請において、欠格事由に該当する行為の有無に関して「無」と記載した申請書を提出し、後に地方出入国在留管理局の調査によって当該行為が発覚した場合などが該当します。
7. 保証金の徴収
外国人やその親族等から保証金を徴収する行為を指します。特に、特定技能外国人が特定技能所属機関から失踪するのを防止するために、特定技能外国人やその家族等から保証金を徴収する行為が該当します。また、特定技能外国人やその家族等から商品またはサービスの対価として不当に高額な金銭の徴収を予定する契約も、「不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約」として本規定に該当します。
8. 違約金の定め
特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約を締結する行為を指します。例えば、地方出入国在留管理局や労働基準監督署等への通報、許可を得ない休日外出、業務従事時間中のトイレ等での離席を禁じてその違約金を定める行為が該当します。なお、労働基準法16条では、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約を禁止しており、これらの契約は二重の意味で法令違反となります。
9. 届出の不履行または虚偽の届出
法令上規定する届出事由が生じているにもかかわらず、地方出入国在留管理局への届出を怠った場合や虚偽の届出を行った場合を指します。例えば、特定技能外国人が行方不明になったにもかかわらず届け出を行わず、その後の摘発によって発覚した場合や、活動状況の届出や支援の実施状況の届出を再三の指導にもかかわらず履行しない場合が該当します。
10. 報告徴収に対する妨害等
入管法19条の20第1項の規定により求められた報告や帳簿書類の提出をしない行為、虚偽の報告や虚偽の帳簿書類を提出する行為、虚偽の答弁をする行為、または検査を拒否・妨害する行為が該当します。
11. 改善命令違反
出入国在留管理庁長官から改善命令を受けたにもかかわらず、これに従わなかった場合を指します。
12. 不法就労者の雇用
外国人に不法就労活動をさせる行為、外国人を不法就労活動のために自己の支配下に置く行為、または業としてこれらの行為に関しあっせんする行為のいずれかを行い、教唆し、またはこれを助けた場合が該当します。ここでいう「業として」とは、入管法上、反復継続して行う意思をもって行うことを意味し、必ずしも営利目的や対価の取得を要件としません。
13. 労働関係法令違反
外国人の就労活動に関し、労働基準法、労働安全衛生法、職業安定法等の労働関係法令に違反することを指します。具体的には、36協定に定めた時間数を超えて長時間労働をさせた場合、労働安全衛生法に定められた措置を講じていない場合、特定技能外国人が妊娠したことを理由に解雇した場合などが該当します。ただし、農業及び漁業においては、天候・季節により左右されるという業務の特殊性により、労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用除外とされています。
14. 技能実習制度における不正行為
技能実習制度における実習実施者(旧技能実習制度における実習実施機関を含む)として不正行為を行った場合、または監理団体として監理許可を取り消され、受け入れ停止期間が経過していない場合を指します。また、他の機関が不正行為を行った当時に、その機関の経営者、役員または管理者として外国人の受け入れ、雇用の管理または運営に係る業務に従事していた場合も該当します。
④ 暴力団排除の観点からの欠格事由
特定技能外国人を雇用するためには、雇用する企業(特定技能所属機関)が暴力団との関係がないことが法律で定められています。具体的には、以下のような企業や個人は特定技能外国人を雇用することができません。
個人事業主の場合は、暴力団員または暴力団員を退会してから5年以内の方は特定技能所属機関になることはできません。法人の場合も、役員に暴力団員または暴力団員を退会してから5年以内の方がいる場合は同様です。また、暴力団員が実質的に事業活動を支配している企業も対象外となります。
これは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に基づいており、暴力団とは「構成員が集団的または常習的に暴力的な違法行為を行うおそれがある団体」と定義されています。この規定は、外国人材の適切な雇用環境を確保し、不当な搾取を防ぐことを目的としています。
⑤ 特定技能所属機関の行為能力・役員等の適格性に係る欠格事由
特定技能外国人を雇用する企業や個人(特定技能所属機関)には、基本的な資格要件が定められています。法律では、以下の状況にある方は特定技能所属機関になることができないと規定しています。
まず、精神機能の障害により、外国人との雇用契約を適切に理解し履行することが困難な方は対象外となります。これは、外国人労働者の権利を守り、適切な雇用関係を維持するための要件です。
また、破産手続中で復権を得ていない方も特定技能所属機関になることはできません。復権とは、破産手続によって制限された様々な権利を回復することを指します。この制限は、安定した雇用環境を確保するために設けられています。
法人の場合、役員にこれらの欠格事由に該当する方がいる場合も同様です。未成年者が経営者である場合は、その法定代理人についても同じ基準が適用されます。
特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
特定技能外国人を雇用する企業は、外国人の活動状況を記録した文書を作成し、雇用契約終了後1年間以上保存する必要があります。記録すべき内容は以下の二種類の台帳に分けて管理します。
「特定技能外国人の管理簿」には、基本的な個人情報として氏名、国籍・地域、生年月日、性別を記載します。また在留管理に関する情報として、在留資格、在留期間とその満了日、在留カード番号、外国人雇用状況届出の届出日を記録します。
「特定技能外国人の活動状況に関する帳簿」には、より詳細な雇用管理情報を記録します。具体的には、勤務場所(派遣の場合は派遣先情報も含む)、業務内容、雇用状況(在籍・離職等)、労働保険・社会保険の加入状況、安全衛生の確保状況を記載します。また、外国人の受入れや支援に要した費用の内訳、休暇取得状況(一時帰国を含む)、行政機関からの指導や処分の内容も記録が必要です。
これらの帳簿に加え、雇用契約書や雇用条件書、賃金台帳、出勤簿、給与支払い記録(口座振込明細書など)も保管が必要です。労働基準法など他の法令で作成が義務付けられている文書については、重複して作成する必要はありませんが、同様に1年以上の保存が必要です。
外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
特定技能外国人の権利を守り、適切な雇用環境を確保するため、法律では保証金の徴収や不当な違約金契約を厳しく禁止しています。この規制は外国人本人だけでなく、その配偶者や親族等にも及び、日本国内外の仲介業者(ブローカー)による不当な金銭徴収も対象となります。
具体的に禁止されているのは、保証金の徴収や財産の管理、および違約金を定める契約です。例えば、失踪した場合の違約金や、労働基準監督署への相談を禁止する契約などが該当します。これらは労働基準法でも禁止されている行為であり、強制労働につながる可能性があります。
支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと
特定技能外国人を雇用する際、企業は外国人従業員に対する支援費用を全額負担しなければなりません。法律では、これらの費用を直接的にも間接的にも外国人従業員に負担させることを禁止しています。
支援費用には、以下のようなものが含まれます。まず、事前ガイダンスや生活オリエンテーションの実施費用、通訳費用があります。また、相談・苦情対応や定期面談における通訳費用、出入国時の送迎に必要な交通費なども企業負担となります。登録支援機関に支援を委託する場合の費用も同様です。
ただし、住宅の賃貸料など実費については、合理的な範囲内で外国人従業員に負担を求めることができます。
企業は事前ガイダンスと生活オリエンテーションにおいて、支援費用を外国人従業員に負担させないことを明確に説明する必要があります。また、支援計画書は外国人従業員が理解できる言語で作成し、内容を十分に説明した上で署名を得ることが求められます。
労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで、適当と認められる者であるほか、派遣先が①~④の基準に適合すること
特定技能外国人を派遣労働者として受け入れる場合、派遣元企業は厳格な基準を満たす必要があります。まず、派遣元企業は外国人が従事する特定産業分野に関連する事業を行っていることが求められます。また、この適格性については、法務大臣と関係行政機関の長による協議を経て認定を受ける必要があります。
派遣元企業として認められるためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 特定産業分野に関連する事業を行っていること
- 地方公共団体や特定産業分野の事業者が資本金の過半数を出資していること
- 地方公共団体の職員や特定産業分野の事業者が実質的に業務執行に関与していること
- 農業分野の場合は、国家戦略特区法に基づく特定機関であること
また、派遣先企業についても、労働関係法令や社会保険関係法令、税法の遵守が求められ、欠格事由に該当しないことが必要です。派遣元企業は、派遣先からの報告に基づいて、外国人の活動状況を出入国在留管理庁に定期的に報告する義務があります。
労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること
特定技能外国人を雇用する企業は、原則として労働者災害補償保険(労災保険)への加入が義務付けられています。労働者を1人でも雇用する事業所は、自動的に労災保険の適用事業所となり、特定技能外国人を雇用する際には適切に届出を行う必要があります。
ただし、以下のような小規模な個人経営の農林水産業は「暫定任意適用事業所」として、労災保険の強制適用から除外されています。
- 労働者が5人未満の個人経営の農業(特定の危険または有害な作業を主として行う事業を除く)
- 常時労働者を使用せず、年間の延べ労働者数が300人未満の個人経営の林業
- 労働者が5人未満の個人経営の畜産、養蚕、水産業
これらの暫定任意適用事業所が特定技能外国人を雇用する場合は、労災保険に代わる措置として、民間の労災類似保険に加入することが求められます。この代替措置により、特定技能外国人の労働災害に対する補償を確実に確保します。
雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
特定技能外国人を雇用する企業には、安定した雇用環境を提供するための財務基盤が求められます。これは、外国人従業員が継続的に就労できる環境を確保し、雇用契約を確実に履行するために必要な要件です。
企業の財務基盤の評価は、事業年度末の財務状況を総合的に判断して行われます。特に、欠損金の有無や債務超過の状況が重要な判断材料となります。
もし直近の決算期末で債務超過の状態にある場合は、追加の対応が必要です。具体的には、中小企業診断士や公認会計士など、企業評価の資格を持つ専門家による財務改善の見通しに関する評価書の提出が求められます。この評価書により、企業の財務状況の改善可能性が確認されます。
報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
特定技能外国人への給与支払いについて、法律に基づいた適切な方法で行う必要があります。基本的な給与支払いのルールは、労働基準法第24条に定められており、通貨での支払い、直接支払い、全額支払い、そして毎月1回以上の定期支払いが原則となっています。
給与の銀行振込による支払いについては、労働基準法施行規則で詳しく定められています。振込による支払いを行う場合、従業員の同意を得ること、本人名義の預貯金口座を使用すること、給与支払日の午前中には引き出しが可能な状態にすることが必要です。また、労働組合または従業員代表との協定締結や、給与明細書の配布も必要となります。
特定技能外国人に対して給与を支払う場合、口座振込が推奨されています。雇用主は特定技能外国人に対して、口座振込による支払い方法について説明し、同意を得る必要があります。
もし口座振込以外の方法で給与を支払う場合は、出入国在留管理庁長官への報告が必要です。具体的には、雇用条件書の写しなどの客観的な資料を提出し、四半期ごとの活動状況報告時に報酬支払証明書を提出することが求められます。
分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)
特定技能外国人の受け入れは、産業分野ごとに異なる実情や必要性を考慮して制度が設計されています。各分野には固有の基準が設けられており、特定技能所属機関はこれらの基準に適合する必要があります。
ただし、すべての産業分野で詳細な基準が告示で定められているわけではありません。基準が定められている分野でも、その内容は産業の特性や需要に応じて異なります。
特定技能外国人の受け入れ人数については、原則として事業所ごとの上限は設けられていません。ただし、一部の産業分野については、分野別要領の別冊で受け入れ人数の上限が定められています。
「お客様一人ひとりの人生に寄り添う」を理念に掲げる当事務所は、神奈川県逗子市を拠点とする行政書士事務所です。特に力を入れているのが、特定技能制度に関する国際業務。地域に密着しながら、外国人材の受け入れをお考えの企業様のサポートを行っています。
また、横須賀の米海軍基地職員を兼務していることから、日米の国際結婚に関する実務経験が豊富です。制度上の知識だけでなく、実際の生活面での不安や疑問もきめ細やかにお応えできることが強みです。
お客様との長期的な信頼関係を大切にしたいという想いから、個人のお客様には最大30%のリピート割引を実施しております。
例えば、在留資格認定証明書(COE)の取得代行は11万円からとなります。
外国人の方々の日本での新生活、また企業様の特定技能制度の活用をしっかりとサポートいたします。まずは無料の初回相談でお気軽にご相談ください。
【受け入れ機関必読】外国人を支援する計画が適切かどうかのポイントを詳細解説 4/4
特定技能外国人の支援計画作成に関する実務解説です。法務省が定める基準への適合要件、2か国語での作成義務、対面・オンラインでの支援実施など、企業担当者が押さえるべきポイントを分かりやすく解説しています。支援計画の作成から実施まで、具体的な注意点を網羅的に紹介します。
【受け入れ機関必読】特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保の基準 3/4
特定技能外国人の受け入れに必要な支援体制の7つの要件を、特定技能基準省令2条2項に基づき詳しく解説。支援責任者・担当者の選任基準から、コミュニケーション体制の整備、文書管理の方法、定期面談の実施要件まで、中小企業の実務担当者向けに具体的な対応方法をわかりやすく説明します。登録支援機関への委託についても触れています。
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特定技能外国人を受け入れるためには、受入れ機関として様々な基準を満たし、適切な体制を整備する必要があります。本記事では、特定技能所属機関・受入れ機関がクリアしておかないとならない4つの基準の一つである特定技能外国人との雇用契約の締結と適切な労務管理について詳細に解説をしています。
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重要な注意事項
本記事は入管法に関する一般的な情報提供を目的としており、執筆時点での法令・運用に基づいています。
入国管理局の審査基準や運用は随時変更される可能性があり、また個々の事案により判断が異なる場合があります。
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