米軍関係者との【国際結婚】メリットとデメリット|SOFAの概要
「日米地位協定」 「在日米軍」 「SOFAステータス」の特別な協定と法的地位を解説。一般の外国人の在留資格との違い、入国手続きや税制の特例、ステータス取得・喪失の影響を詳細に紹介。米軍関係者との結婚はたくさんのメリットがある一方、知っておかなくてはならないデメリットも存在します。基地妻の方、リタイヤを考える現役軍人(AD)、これからアメリカ軍人との結婚を考えている人が絶対に知っておくべき具体的なケーススタディを現役の日本人米軍基地職員の行政書士が徹底解説します。
- 1. 日米地位協定「SOFA」の概要と目的
- 1.1. 日米地位協定の歴史的背景
- 1.2. 協定の主要な条項
- 2. SOFAステータス:在日アメリカ人の特別な地位
- 2.1. SOFAステータスの定義と法的根拠
- 2.2. SOFAステータスの法的根拠
- 2.3. SOFAステータス適用対象者
- 3. SOFAと一般の在留資格の主な違いと特徴
- 3.1. 入国手続きの違い
- 3.2. 在留期間と更新手続き
- 3.3. 就労許可と制限
- 3.4. 税金と社会保障の取り扱い
- 4. アメリカ軍人と国際結婚するメリット!
- 4.1. メリット1: 魅力的な給与
- 4.2. メリット2: QOLが向上
- 4.3. メリット3: キャリアプラン
- 5. アメリカ軍人と国際結婚するデメリット
- 5.1. デメリット1: 定期的な転勤
- 5.2. デメリット2: 命の危険
- 5.3. デメリット3: 海外での孤独
- 6. SOFAステータスの取得と喪失:影響と手続き
- 6.1. SOFAステータス取得の流れ(アメリカ人)
- 6.1.1. アメリカ軍人と日本で結婚するときの手続き
- 6.2. ステータス喪失のケース
- 6.3. ステータス喪失後の在留手続き
- 7. 具体的なケーススタディ
- 7.1. 軍との雇用契約が切られた場合
- 7.2. 退役後も日本に滞在を希望する場合
- 7.3. 日本人との国際結婚と在留資格の変更
- 8. まとめ
日米地位協定「SOFA」の概要と目的
日米地位協定の歴史的背景
日米地位協定(正式名称:日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)は、1960年に締結された日本とアメリカの重要な二国間協定です。この協定は、日本における米軍の駐留と活動に関する法的枠組みを定めています。
出典:外務省 (Ministry of foreign affairs)日米地位協定QA
協定の主要な条項
日米地位協定は、在日米軍の法的地位、施設・区域の使用、刑事裁判権、租税の免除など、多岐にわたる事項を規定しています。特に、米軍関係者の日本における特別な地位「SOFAステータス」は、この協定の重要な要素の一つです。この記事では主に在留資格に関係するSOFAのステータスに関わる点について解説をしていきます。
SOFAステータス:在日アメリカ人の特別な地位
SOFAステータスの定義と法的根拠
SOFA(Status of Forces Agreement)とは、日米地位協定に基づいて在日米軍関係者に付与される特別な法的地位を指します。これにより、通常の外国人とは異なる在留資格や特権が与えられます。
SOFAステータスの法的根拠
SOFAステータスは日米地位協定第9条に基づいています。
この条項により、SOFAステータス保持者は日本の出入国管理法の適用を一部免除されます。
具体的には、在留資格が不要になります。もちろん査証(ビザ)も不要です。
入管法の適用を一部免除される為、在留期限や更新、パスポートの携帯義務など一般的なルールが適用されません。
SOFAステータス適用対象者
SOFAステータスが適用されるのは、主に以下の人々です:
Active Duty (AD)
現役の軍人で、4軍 (Army, Air force, Navy, Marine) のいずれかに属している。
日本には専用、共同使用含め130箇所の施設があり、横須賀もその一つ。約55,000人が駐留している。(2023年)
Gevernment Service (GS)
GSとは連邦政府職員(国家公務員)で教育や行政分野にあたる主にホワイトカラーで働く民間人です。
民間人といってもRetired military(退役軍人)の再就職先となっている場合が多く、米軍基地で働くGSの多くが元軍人です。
Dependent(Spouse)
軍人や軍属の配偶者と21歳以下の子供が対象です。
日本人が軍人と結婚した場合、このDependentに該当し、手続きを経てSOFAステータスを取得します。尚、軍での手続きは永住権の審査も兼ねているため通常の結婚手続きとはかなり異なります。
Contractor (CTR=KTR)
アメリカ軍と契約をして働く民間企業の職員。軍の仕事を請け負っている技師や各分野の専門家などが該当します。
範囲は様々で海軍でよく聞くのはBIW、AIT、Altiqueでしょうか。
アメリカ軍人や軍属と結婚した人は米軍での正式な手続きを経てSOFAステータスを得ることができます。
ただし、配偶者が軍を辞めた場合や、離婚してしまった場合には同時にSOFAのステータスを失うことになるので注意が必要です。
SOFAと一般の在留資格の主な違いと特徴
入国手続きの違い
SOFAステータス保持者は、通常の外国人とは異なる入国手続きを経ます。具体的には:
- パスポートに加え、軍発行の身分証明書(ID)が必要
- 在留カードの代わりに、SOFAステータス証明書を所持
- 通常の出入国審査を受けずに入国可能
日米地位協定に基づき、SOFAステータスに該当する人は中長期滞在であっても外国人登録証の携帯義務もなく、住所の届出もありません。基本的には住民基本台帳に載ることもないので、扱い的には日本に住む住人でもないのです。
上記は軍発行のIDでCAC (Common Access Card)と呼ばれているものです。映画でも気にして見ているとよく出てきます。カードの帯で色分けされており、一目で身分が分かるようになっています。ちなみに日本人の在日米軍基地職員は青のCACカードを持っています。
在留期間と更新手続き
SOFAステータス保持者の在留期間は、そのスポンサーの職務や任務に応じて決定されます。
就労許可と制限
SOFAステータス保持者(ここではMilitary Spouseとします)は、その身分に基づいて米軍関連の職務に就くことができます。しかし、一般の日本企業での就労には就労資格がないので別途、在留資格が必要となります。
その為、多くの人は基地内の銀行やスーパー、後はLocal HireとしてGSの仕事についています。
税金と社会保障の取り扱い
SOFAステータス保持者は、原則、日本の所得税や住民税が免除されます。市区町村に住人としての登録がないためです。また、社会保障についても、米国の制度が適用されるケースが多くあります。
原則とはアメリカから来日したSOFAに該当するアメリカ人が対象としている点です。
日本人で日本国内で米軍人と結婚し、引き続き日本に住民票を置いている場合には税負担が免税されるわけではないので注意が必要です。あくまで市区町村役場に住所地を置いている場合には住民としての義務(納税)が発生します。これは健康保険、国民年金に関係します。
日本とアメリカの年金、健康保険制度の違いについては下記のページをご覧ください。
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アメリカ軍人と国際結婚するメリット!
アメリカでは米軍人と家族をサポートするための様々な施策がなされてます。
言い換えればそれらはメリットとも取れるでしょう。その一部を米軍基地内部を知る行政書士が紹介します。
メリット1: 魅力的な給与
日本の二倍⁉︎驚きの給与
米軍の給与体系はとても優れています。下記の表は勤続10年、階級はE-7(NavyだとChief)と呼ばれる階級の人の給与例です。合計で93,712ドル。現在の為替レート(156円/$)で計算すると14,619,072円。住宅手当や食事等手当てが非課税な点がポイントです。
基本情報 | |
階級 | E-7 |
---|---|
勤続年数 | 10年 |
税申告区分 | 独身 |
米国本土外居住 | はい |
永続的任務地の郵便番号 | 該当なし |
給与と手当 | |
年間基本給 | $58,636.80 |
年間住宅手当 (BAH) | $25,344.00 |
年間食事手当 (BAS) | $5,523.00 |
非課税手当(BAH + BAS) | $30,867.00 |
控除 | |
前暦年の扶養控除数 | 1 |
個人控除額 | $0.00 |
標準控除額 | $14,600.00 |
控除総額 | $14,600.00 |
課税と優遇 | |
課税所得(基本給 - 控除総額) | $44,036.00 |
税率 | 12% |
グロスアップ額 | $35,076.14 |
税制上の優遇額 | $4,209.14 |
通常軍事報酬(RMC)総額 | $93,712.94 |
メリット2: QOLが向上
家賃20万円以上の家でも無料で住める!?
給与に占めるBAH(住宅手当)が非常に大きく、また、水道光熱費も全て軍側が負担してくれます。横須賀周辺だと25万円/月程の分譲マンションや郊外の戸建てに住んでいる人が多いでしょう。幹部(オフィサー)やGSは、さらに大きな家に住む事も可能です。
メリット3: キャリアプラン
退役後、GSというキャリア
米軍基地にはたくさんのGS(General Schedule)と呼ばれる国防総省(DOD)の職員が派遣されています。
GSは軍隊でのサービスを終えた人が多く在籍しています。私の上司は元海軍のE8(Senior Chief)で現在はGS13。このGSはMilitaryの階級とは異なりますが、給与等級的にはO5(中佐)と同等です。
今回は、アメリカ軍人との国際結婚を考えているけど、給与やキャリアについてはどうなの?そんな不安にフォーカスしたメリットを取り上げてみました。
実は、他にもJCI(自賠責保険)が安い、基地内の店舗での買い物は無税、医療費が無料など、引越し代が無料など。国にサービスをする人とその家族をとても手厚く保護しようという国民と国の意思を感じ取れます。
「Thank you for your service」 制服を着ていると知らない人でも軍人に敬意を示すのがアメリカです。
アメリカ軍人と国際結婚するデメリット
デメリット1: 定期的な転勤
PCS Order
アメリカ軍人は2年か4年の間に次の勤務先の基地へ異動が命ぜられます。家族も同様です。これをPCS (Permanent Change of Station)と呼びます。
友人関係を断つことになる為、特に子供がいる家庭ではとてもデリケートな問題です。
デメリット2: 命の危険
戦争や内戦へ
軍人は外からの敵、中からの敵から国を守るために命をかけて働きます。実際に、20年という軍隊でのサービスの中で戦地へ赴くこともあるでしょう。大切な人を失うリスクが通常の人よりも高いことは必ず理解しておかないといけません。
デメリット3: 海外での孤独
日本国外で一人で過ごす
結婚して1年、頼りの旦那は船に乗って出港してしまった。一度、作戦航海に出ると2,3ヶ月洋上で過ごす事も。
アメリカでの慣れない生活、英語が苦手で友達もできない、旦那とは連絡がとれない。このような状況で過ごす場合、非常に大きなストレスがかかります。
アメリカ軍人と結婚するというのはやはり少し特殊な環境だということを理解しておかねばなりません。
ただし、デメリットをあまりに深く考える必要はないのではないかと個人的には思います。
日頃から旦那やその周囲の人とのコミュニケーションをよくとり、しっかりと関係を作っておきましょう。
「不在中の家族を支え合う」のが軍人の家族、妻の役割です。
SOFAステータスの取得と喪失:影響と手続き
SOFAステータス取得の流れ(アメリカ人)
SOFAステータスは、通常、米軍や関連機関からの派遣や雇用に伴って付与されます。
家族の場合は、主たるSOFAステータス保持者との関係証明が必要です。
日本で米軍関係者と結婚する場合は手続きがとても大変です。
アメリカ軍人と日本で結婚するときの手続き
アメリカ軍人と結婚するには、軍の法務部(Legal Office)での手続きが必要です。
軍人以外のSOFA(GSなど)と結婚する場合には日本の戸籍担当窓口に提出するだけで有効な婚姻とみなされます。
1
マリッジセミナー受講
軍人と結婚する際の注意点などの案内セミナー。受講の有無については軍によって異なります。
2
必要書類の確認
軍のリーガルオフィス、日本の戸籍担当窓口で提出書類の収集をします。なお、基地内の手続きには日本の書類は英訳をつけなくてはなりません。
3
軍の上司へ書類提出、上司の承認
スポンサーの上官、担当官へ書類の提出をします。
4
Legal Office(法務部)へ承認書提出
婚姻に必要な証明書の作成を依頼します。
5
婚姻要件宣言書 (Affidavit of Competency to marry) 作成
軍のLegal office(法務部)が作成してくれます。重婚、再婚禁止期間、結婚が適法にできる状態であるかなどを証明する書類です。
6
日本の市町村役場へ提出
アメリカ国籍者はー婚姻要件具備証明書または宣誓書等及びその日本語訳、本人確認書類をまとめて婚姻届を提出します。
7
受理(婚姻の成立)
届出が受理されると婚姻が有効に成立します。
なお、アメリカ国籍者がアメリカ国外で結婚した場合には、アメリカ政府が結婚証明書を発行することはありません。
8
戸籍へ記載
戸籍へ記載されます。
日本での法的に有効な婚姻手続きは通常、アメリカ国内でも有効とみなされます。
9
Legal officeへ「婚姻受理証明書」(英訳付)を提出
日本の市区町村役場の窓口で婚姻の届出を受理した証明書を発行して米軍の法務部へ提出します。
10
ミリタリーIDの発行
PSD等がSOFAのDependent IDを発行します。
ステータス喪失のケース
以下のような場合にSOFAステータスを喪失する可能性があります:
米軍を退役、辞職、解雇等
SOFAステータスは軍人と軍属、軍人の配偶者等へ与えられた日米間で締結されている協定によるものです。軍を離れた後は原則、SOFAのステータスは失われます。
任務地の変更
日米地位協定に基づくSOFAステータスであるので、日本を出国後は日本でのSOFAステータスは失われます。 軍人は2年程度で PCS (Permanent Change of Station)がありPRD(Plan of Rotation Date)で決まっています。Extension(延長)の希望が通ることもありますが、それは所属するCommand次第でしょう。
身分の喪失
離婚等により軍属で亡くなった場合には、原則、SOFAステータスは失われます。
ステータス喪失後の在留手続き
SOFAステータスを喪失した後も日本に滞在を希望する場合、通常の在留資格への変更手続きが必要となります。
この際、在留目的に応じた適切な在留資格を申請する必要があります。
具体的なケーススタディ
軍との雇用契約が切られた場合
- 30日以内に「*在留資格取得申請」を取得する
- 60日以内に出国する
この猶予期間である60日以内に出国をすれば不法滞在扱いとはなりません。
*在留資格取得申請とは、適法な在留資格を持たないで日本に在留する人、分かり易い例で言うと子供が生まれた時などにする手続きで、SOFAの人もこの手続きが必要です。何故なら、SOFAのステータスは日本に在留していても入管法の定義する在留資格がないためです。
退役後も日本に滞在を希望する場合
米軍からリタイヤ後も日本での生活を続けたい場合、以下の選択肢があります:
- 就労ビザ(専門的・技術的分野)の取得
- 「日本人の配偶者等ビザ」(日本人配偶者がいる場合)の申請
- 永住権の取得(条件を満たす場合)
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日本人との国際結婚と在留資格の変更
SOFAが日本人と結婚し、そのステータスを離れて日本で生活を続ける場合には「日本人の配偶者等」の在留資格への変更が必要です。
「日本人の配偶者等」であれば在留期限はあるが延長可能、就労の制限はありません。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
【配偶者ビザ】申請に必要な条件や書類、基礎知識を解説
日本人と結婚した外国人のための「日本人の配偶者等」在留資格について解説。申請方法、メリット、デメリット、永住権取得までの流れを簡単に説明。日本での新生活を始める方必見の情報満載!
まとめ
日米地位協定とSOFAステータスは、在日米軍関係者の日本における生活と活動を支える重要な枠組みです。アメリカの軍人、軍属と国際結婚される予定の日本人の方や、リタイヤ後も日本で生活を続けたい方々にとっては、SOFAステータスへ(からの)移行を適切に行うことが重要です。当事務所では日本での手続きのサポートをさせていただきます。現役の米軍基地職員なので、軍人やGSとのリアルなコネクションを持ち、様々なケースに対応可能です。
SOFAステータスに関する手続きは是非お気軽にお問い合わせください。
当事務所ではリーズナブルな料金と最大30%のユニークなリピート割引で、お客様からのご依頼をお待ちしております。
COEの取得は11万円~、その他、各種手続きに対応可能です。特に米軍基地という特殊な環境を熟知、多くのSOFA、GS、ADとのパイプがあり、アメリカ軍人との国際結婚に不安な方の力になります。初回の相談料は無料となっていますので、是非お気軽にお問い合わせください。