外食業の特定技能外国人受入れガイド:制度の基礎から注意点まで丁寧に解説
外食産業における人材不足が深刻化する中、特定技能制度を活用した外国人材の受け入れが注目を集めています。令和6年4月からの5年間で53,000人の新たな受入枠が設定され、令和5年12月末時点の在留者数13,312人から大幅な拡大が見込まれています。特に都市圏でのインバウンド需要対策として、多言語対応可能な人材の確保が期待されています。本稿では、特定技能制度の現状と課題、活用のメリット・デメリット、そして外国人材の効果的な受け入れに必要な実務知識について解説します。
この記事を読むとわかること
- 外食産業における特定技能制度の現状と受入枠の動向
- 特定技能1号と2号の違いと要件
- 外国人材が従事できる具体的な業務範囲
- 特定技能制度活用のメリットとデメリット
- 受入機関として求められる基準要件と義務
- 1. 外食産業を取り巻く深刻な現状と解決策
- 2. 外食産業における特定技能制度の受入枠の分析
- 2.1. 制度開始からの受入実績と推移
- 2.2. 令和6年度からの新たな受入枠の特徴
- 2.3. 受入枠拡大の背景と今後の展望
- 3. 特定技能制度活用のメリットとデメリット
- 4. 外食業における特定技能外国人の基礎知識
- 4.1. 特定技能1号と2号の違い
- 4.1.1. 特定技能2号へ移行するために必要なスキルとは
- 4.2. 外食分野における外国人材の日本語能力
- 4.2.1. JLPTレベル別にみた目安について
- 4.3. 特定技能「外食」で認められる業務範囲
- 5. 外食分野における特定技能外国人材の就労制限 〜風俗営業法に基づく規制〜
- 6. 特定技能外国人材の受入機関における基準要件
- 6.1. 受入れに必要な4つの基準
- 6.2. 受入機関が果たすべき義務
- 7. よくある質問
- 8. まとめ
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外食産業を取り巻く深刻な現状と解決策
外食業界における人材不足は深刻な課題となっています。
令和4年度の有効求人倍率を見ると、「飲食店主・店長」が7.11倍、「飲食物給仕係」が5.06倍、「調理人」が3.12倍と、外食産業にかかる求人は全産業平均の1.19倍を大きく上回っています。
このような状況に対応するため、特定技能制度を活用した外国人材の受入れが注目されています。
外食産業における特定技能制度の受入枠の分析
制度開始からの受入実績と推移
外食業における特定技能制度は、制度開始時には53,000人の受入見込数で運用が開始されました。
その後、令和5年度末までの受入見込数として30,500人に下方調整され、実際の在留者数を見ると令和5年12月末時点で13,312人となっています。
当初の想定よりも実際の受入数は少なく推移しており、これはコロナ禍による外食産業への影響や、受入体制の整備に時間を要したことなどが要因として考えられます。
令和6年度からの新たな受入枠の特徴
令和6年4月からの5年間における新たな受入見込数は53,000人と設定されました。
令和5年12月末時点の在留者数13,312人と比較すると約4倍の規模であり、今後の外食業界における外国人材への期待の大きさを示しています。
特に、コロナ禍からの回復期における需要増加や、東京、大阪、名古屋などの都市圏でのインバウンド需要対策で、日本語以外の言語を話す外国人材の積極的な受入れが見込まれています。
*令和6年6月時点での外食による特定技能1号在留者数は数は20,308人となっており、令和5年12月から半年で150%も増加しました。
受入枠拡大の背景と今後の展望
外食業分野においては、令和 10 年度には 国内で481万1,000 人の就業者が必要になると推計されるが、同年度の就業者数は 455万8,000人となる見込みであり、同年度には 25万3,000人程度が不足することになると試算されています。
そこで、生産性の向上、人材確保の取り組みをしてもなお充足できない人材需要に対応するための数値として53,000人という枠が設定されました。この数値は、業界の実態と5年後を見据えた現実的な目標として捉えることができるでしょう。
特定技能制度活用のメリットとデメリット
特定技能制度を活用することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 即戦力となる人材の確保が可能
- 最長5年間の継続的な雇用が可能(1号の場合)
- 技能試験に合格した一定水準以上の人材を採用可能
- 日本語でのコミュニケーション+外国語対応が可能な人材の確保
特定技能制度は以下のようなデメリットも考えなくてはなりません。
- 採用にコストがかかる
- 外国人材の受入から出国まで法定されている支援が必要になる
- 転職されてしまう可能性がある
- 生活習慣や文化の違いからトラブルに発展しがち
特定技能外国人材の雇用においては、日本人従業員と同等以上の処遇が求められ、これには給与や福利厚生が含まれます。さらに、採用時には送り出し機関への手数料や在留資格申請など、さまざまな初期費用が発生します。
支援面では、多言語でのマニュアル整備や日常生活のサポート、行政手続きの補助など、法律で定められた支援の実施が必須となります。これらの支援体制が十分に機能していないと、文化や習慣の違いから職場内や地域社会でのトラブルを引き起こす可能性があります。一方で、適切な労働環境と生活支援を提供することで、外国人材の定着率を高めることができます。
なお、これらの支援業務については、登録支援機関に委託することが可能です。この制度を活用することで、専門的なノウハウを持つ機関のサポートを受けながら、より効果的な受け入れ体制を構築できます。
外食業における特定技能外国人の基礎知識
特定技能1号と2号の違い
項目/在留資格 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
在留期間 | 5年(通算) | なし |
技能試験* | 1号評価試験に合格 | 2号評価試験に合格 |
日本語能力* | JLPT N4 または JFT-Basicに合格 | JLPT N3に合格 |
家族帯同 | 不可 | 可能 |
雇用形態 | フルタイム・直接雇用 | フルタイム・直接雇用 |
特定技能1号は、基本的な調理や接客業務に従事する人材向けの在留資格です。在留期間は最長5年間で、家族の帯同は基本的に認められません。試験は技能評価試験と日本語能力試験に合格しなくてはいけません。
一方、特定技能2号は、より高度な技能を持ち、店舗運営にも携われる人材向けの在留資格です。在留期間の更新回数に制限がなく、家族の帯同も可能です。1号と同様に技能と日本語試験に合格が必要です。
1号、2号ともに、以下の雇用形態を遵守しなくてはなりません。
- フルタイム雇用(時間制のアルバイトとしては雇えない)
- 派遣禁止(直接雇用でのみ契約可能)
- 一つの所属機関だけ(複数の所属機関と契約して掛け持ちしながら働くことはできない)
フルタイムの定義
週5日以上かつ年間の就労日数が217日以上であって、かつ、週あたりの労働時間が30時間以上。
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特定技能2号へ移行するために必要なスキルとは
外食分野における2号特定技能外国人の資格要件は、高度な実務経験と技能を必要とする設定となっています。具体的には、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
まず、実務経験として、食品衛生法の営業許可を持つ飲食店で2年以上の店舗管理経験が求められます。この間、副店長やサブマネージャーとして、アルバイトスタッフや特定技能外国人の指導・監督を行いながら、接客業務と店舗管理補助の実績を積む必要があります。
さらに、「外食業特定技能2号技能測定試験」に合格することが要件となっています。加えて、日本語能力については、JLPTでN3以上の資格が必須とされています。これは、管理職として必要な高度なコミュニケーション能力を担保するためです。
外食分野における外国人材の日本語能力
日本語能力試験(JLPT)は、N5(入門)からN1(上級)まで5段階のレベルがあり、数字が小さくなるほど高度な日本語力が求められます。特定技能「外食」分野では、入国時にN4レベル以上の日本語能力が要件となっています。
しかし、実際の外食業務では、接客や同僚とのスムーズなコミュニケーションが必要不可欠です。そのため、N4レベルは最低限の基準であり、実務においてはN3以上の日本語能力があることが望ましいと言えます。より高い日本語力は、業務上のミスコミュニケーションを防ぎ、外国人材自身の精神的な負担も軽減します。
JLPTレベル別にみた目安について
JLPT「N4」
基本的な日本語を理解することができる
読む
日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。
・ 新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。
・ 日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。
聞く
日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。
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特定技能「外食」で認められる業務範囲
特定技能外国人が従事できる業務は以下のようなものがあります。
【1号の場合】
- 飲食物調理:食材の仕込みや調理業務
- 接客:オーダー受付、料理提供、レジ業務
- 店舗管理:清掃、在庫管理等の基本的な管理業務
*在留期間全体の一部の期間 において「調理担当」など、特定の業務にのみ従事することも可能です。
【2号の場合】 上記特定技能1号の業務に加え
- 店舗経営に関する業務
- 従業員の労務管理
- 売上管理
- 経営分析等
【1号・2号共通】
当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(店舗において 原材料として使用する農林水産物の生産、店舗における調理品等以外の物品の販売等)に付随的に従事させることは可能です。ただし、この付随的作業をメインにやらせることを目的とした採用はできません。
外食分野における特定技能外国人材の就労制限 〜風俗営業法に基づく規制〜
外食分野における特定技能外国人材の就労には、風俗営業法に関連する重要な制限が設けられています。
主に、店舗や施設等の場所的な制限と、接待行為など行為制限が設けられています。
【場所的な制限】
まず、風俗営業法で定められた「風俗営業」施設や「性風俗関連特殊営業」を行う営業所での就労は一切認められません。これらの施設では、たとえ通常の外食業務であっても、特定技能外国人を雇用することはできません。
【行為の制限】
また、風俗営業法が定める「接待」行為を特定技能外国人に行わせることも禁止されています。ここでいう「接待」とは、客の横に座って酒類を注ぐなどの接待サービスを指します。
「風俗営業」及び「性風俗関連特殊営業」を営む営業所においては、外食業分野の業務であっても、特定技能外国人を就労させることはできません。
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特定技能外国人材の受入機関における基準要件
受入れに必要な4つの基準
- 1. 雇用契約の適切性
- 外国人労働者に対する報酬は日本人と同等以上であること
雇用条件が適正に設定されていること
- 2. 機関としての適格性
- 過去5年以内に出入国関係法令や労働法令の違反がないこと
法令を遵守する体制が整備されていること
- 3. 支援体制の整備
- 外国人材が理解できる言語でコミュニケーションが取れる体制があること
適切な支援担当者が配置されていること
- 4. 支援計画の適切性
- 生活オリエンテーションなど、来日後の支援計画が具体的に策定されていること
外国人材の円滑な定着をサポートする体制が整備されていること
受入機関が果たすべき義務
- 雇用契約の確実な履行(特に報酬の適切な支払い)
- 適切な支援の実施(登録支援機関への委託も可能)
- 出入国在留管理庁への各種届出の適切な実施
なお、これらの基準や義務に違反した場合、外国人材の受入れが認められなくなるほか、出入国在留管理庁から指導や改善命令を受ける可能性があります。
よくある質問
-
登録支援機関は必ず利用する必要がありますか?
-
社内に支援体制を整備できる場合は、必ずしも利用する必要はありません。
-
特定技能1号から2号への移行は可能ですか?
-
必要な実務経験を積み、2号の技能試験に合格することで移行可能です。
-
在留期間の更新は可能ですか?
-
1号の場合は通算5年まで、2号は更新回数に制限はありません。
まとめ
外食業界における特定技能制度は、外国人材の適切な雇用を促進するための仕組みとして設計されています。この制度では、外国人労働者の権利を守り、適切な労働環境を確保するため、事業者に対して厳格な基準が設けられています。
具体的には、日本人と同等以上の賃金支払いの義務付けや、労働時間の管理、契約内容の遵守など、様々な規定が定められています。また、定期的な監査や相談窓口の設置により、外国人材の労働環境を継続的に監視する体制が整備されています。
これらの規定に違反した場合、不法就労助長罪の適用や、特定技能外国人の受入れ資格を失うなど、重大な制裁措置が設けられています。そのため、制度を適切に運用するためには、最新の法令や規制を熟知し、適切な対応を取ることが不可欠です。
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