2024年6月改正【育成就労制度】とは?|技能実習は廃止?制度の概要と技能実習との違いを比較

お知らせ

記事内では外国人の方にもわかりやすいよう在留資格を「ビザ」と呼ぶ場合があります。

この記事を読むと分かること

  • 育成就労制度の概要と施行時期
  • 技能実習制度・特定技能制度との違い
  • 育成就労制度で働ける分野
  • 転籍に必要な4つの条件
  • 制度施行までの技能実習生の扱い
目次

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2024年最新【特定技能】基本情報|複雑な制度をわかりやすく解説

特定技能の基本情報から申請手順まで詳しく解説。多くの対象分野、必要条件、申請方法、就労時の権利義務を網羅。日本でのキャリアスタートに最適な在留資格!今から人生を変えましょう!

※この記事は令和6年11月23日時点の情報に基づいています。

育成就労制度の概要と目的

育成就労制度導入の背景と目的

育成就労制度は、従来の技能実習制度が「技術の移転による国際貢献」を目的としていた点を見直し、日本の深刻化する人手不足に対応するため人材育成と人材確保を目的とする新たな制度として創設されました

制度の基本的な仕組み

育成就労制度では、原則として3年間の就労を通じて、特定技能1号相当の技能水準を持つ人材を育成することを目指します。受入れ対象となる「育成就労産業分野」は、特定産業分野(人手不足が深刻な分野)のうち、就労を通じて技能を修得させることが相当なものに限定されることになっています。

基本方針と分野別の運用方針

制度全体の基本的なルールと、各産業分野における具体的な運用方法は、改正法施行の2027年に向けて、専門家(有識者)や労働者・経営者団体(労使団体)からの意見を取り入れながら決まることになっています。

施行スケジュール

育成就労制度の受入れ対象分野である育成就労産業分野については、施行日(改正法の公布日(令和6年6月21日)から起算して3年以内)までに、有識者や労使団体等で構成する新たな会議体の意見を聴いて決定されることとなります。これらの手続については、それぞれの分野を所管する省庁を中心に検討が進められることとなります。

  • 令和6年度:基本方針、主務省令等の作成
  • 令和7年度:分野別運用方針の作成
  • 令和8年度:事前申請受付開始
  • 令和9年度:制度施行(予定)

送出国とのMOC(協力覚書)の交渉・作成は2024年から制度が施行されるまでの間に交わされる予定です。
原則、このMOCを結んだ国からのみ人材の受け入れをする方針とされています。

MOCとは

政府機関や関係組織間で結ばれる協力関係の公式な合意文書を、一般的に英語の頭文字をとりMOC (Memorandum of Cooperation) と呼びます。これは共同研究や人材交流、情報共有などを通じて、特定分野での協力を推進するための枠組みです。特定技能の送り出し機関ともMOCを結び適正性を確保しています。

育成就労制度と技能実習・特定技能制度との比較

制度名目的期間転籍試験要件支援体制
技能実習制度国際貢献最長5年原則不可技能検定等必須監理団体による支援
育成就労制度人材育成・確保3年条件付きで可能*各分野で設定監理支援機関による支援
特定技能制度人材確保1号5年
2号無制限
可能技能
日本語試験
1号のみ支援必要

*育成就労制度の転籍は現時点で「条件付きで可能」とされています。詳しくはこちら(ページ内をジャンプします)

特定技能制度との比較

1. 入国時の技能、日本語能力水準の違い

育成就労で必要とされる日本語能力

  • 日本語能力A1*、JLPT N5以上に合格、又は、それに相当する日本語講習の受講
  • 技能試験はありません

特定技能で必要とされる日本語能力

  • JFT-Basic 又は JLPTのN4レベルに合格
  • 各分野ごとの技能試験に合格、又は同種の技能実習2号を良好に修了しているとき

育成就労制度と特定技能制度は、どちらも人材不足への解決策として設けられた制度ですが、その性質は大きく異なります。特定技能制度は専門知識や技能を持つ「即戦力」人材を受け入れる制度である一方、育成就労制度では入国時点での専門的なスキルは必須とされていません

*日本語能力は「CEFR」を基に測られます。CEFRはヨーロッパが語学能力を6段階(A1、A2、B1、B2、C1、C2)で評価する国際的な基準でこれを日本語に当てはめたものです。

【技能実習2号を良好に修了】とは?|特定技能1号へ移行する際の重要なポイントを解説

技能実習制度から特定技能1号への移行を考えている技能実習生にとって、「技能実習2号を良好に修了」することは非常に重要なステップとなります。この記事では、良好な修了の具体的な条件や、特定技能1号へのスムーズな移行のためのポイントを詳しく解説します。

2. 在留期間の違い

育成就労の在留期間

原則3年

特定技能1号の在留期間

通算5年

育成就労制度は、外国人材が就労を通じて技術と日本語能力を向上させ、3年後に特定技能1号へステップアップすることを目指す制度です。

育成就労(3年間)と特定技能1号(5年間)を合わせることで、最低8年間の継続的な雇用が可能となります。さらに、技能水準の向上により特定技能2号へ移行できた場合は、在留期間の制限がなくなるため、より長期的な人材確保が可能となります。

このように段階的なキャリアパスを設けることで、外国人材の成長と事業者の安定的な事業運営の両立を図ることができます。

3. 管理、支援団体の違い

育成就労の支援体制

監理支援機関による支援が必須

特定技能1号の支援体制

受入機関又は登録支援機関への委託

育成就労外国人と育成就労実施者との雇用契約の成立や斡旋など、育成就労制度が適正に実施されているかどうか管理を行う役割を許可性とされました。

技能実習制度との比較

1. 制度目的の違い

育成就労の制度目的

人材育成・人材確保

技能実習の制度目的

技術移転による国際貢献

日本は深刻な人手不足に直面する一方、世界的な人材獲得競争が激化しています。これまでの技能実習制度では、制度の目的と実態の乖離や、外国人の権利保護などの課題が指摘されてきました。

そこで政府は、技能実習制度を発展的に解消し、新たに育成就労制度を創設しました。この制度は、外国人材の育成と人材確保を目的とし、特定技能制度への移行を見据えたキャリアパスを提供します。

これにより、外国人が安心して働きながら技能を向上できる環境を整備し、日本が「選ばれる国」となることを目指しています。
詳しい説明を見る(ページ内のトピックへジャンプします)

2. 転籍(転職)について

育成就労の転籍

一定の要件下で「可能

技能実習の転籍

原則、「不可」

技能実習生の失踪が問題になった一つとして、(やむを得ない事情を除き)転籍ができない点にありました。また、「やむを得ない事情」という部分が明文化されていなかった為、その運用も曖昧でした。育成就労では一定の条件下で転籍を認めることで、技能実習制度の課題をクリアする狙いがあります。現時点で判明している条件についてはこちらからご確認ください。(ページ内でジャンプします)

3. 管理団体の違い

育成就労の制度目的

監理支援機関

技能実習の制度目的

監理団体

監理支援機関は主務大臣から許可を得る必要があり、その主な役割として国際的な人材マッチング、受入れ機関への監理・指導、そして育成就労外国人の支援・保護を行います。また、既存の技能実習制度の監理団体と比較して、監理・支援・保護機能を強化するため、許可要件が見直されることになっています。つまり、基本的な役割は技能実習の監理団体と類似していますが、より厳格な基準で許可制が実施され、外国人労働者の保護や支援体制が強化される制度となります。

育成就労制度から特定技能への移行の流れ

就労開始までの準備

  • 日本語能力A1相当以上の試験(JLPT=N5等)に合格する
  • または、それに相当する日本語講習の受験

*技能の水準は定められていません。

STEP
1

育成就労で3年間

特定技能1号移行に向け3年間の育成期間を過ごします。
その間に、特定の条件を満たせば本人の意向での転籍も可能です。
3年間で以下の基準を満たします

  • 技能検定3級や特定技能1号評価試験に合格 かつ、
  • 日本語能力A2相当以上の試験(JLPTのN4等)に合格すること
STEP
2

特定技能1号

特定技能2号ではさらに高度な技術水準、日本語能力が求められます。
5年間で水準を満たし、特定技能2号へ移行することで在留期限はなくなります。

STEP
3

育成就労制度の対象となる分野

育成就労制度の対象分野は、特定技能制度の特定産業分野12分野(14業種)+ 新たに追加された4業種、合計16分野を基本としつつ、就労を通じた技能修得が相当な分野に限定されますが、現時点ではまだ詳細はわかっていません。

下記は、2024年現在の特定技能制度の対象分野と今後5年間の受け入れ見込み数となっています。

特定技能制度における今後5年間の受入れ見込数

分野名受入れ見込数
(令和6年4月から5年間)
主な業務内容
介護135,000人身体介護、生活援助等
ビルクリーニング37,000人建築物内部の清掃
工業製品製造業173,300人鋳造、鍛造、めっき、金属プレス加工、工場板金、電子機器組立て等
建設80,000人型枠施工、左官、とび等
造船・舶用工業36,000人溶接、塗装等
自動車整備10,000人日常点検整備、定期点検整備等
航空4,400人空港グランドハンドリング、航空機整備等
宿泊23,000人フロント、企画・広報、接客等
農業78,000人耕種農業、畜産農業
漁業17,000人漁業、養殖業
飲食料品製造業139,000人飲食料品の製造・加工、安全衛生
外食業53,000人飲食物調理、接客、店舗管理
自動車運送業 (New!)24,500人自動車の運転業務等
鉄道 (New!)3,800人鉄道施設の保守・管理等
林業 (New!)1,000人育林、素材生産等
木材産業 (New!)5,000人木材加工等

※ 工業製品製造業には、従来の素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業が含まれます。
※ 自動車運送業、鉄道、林業、木材産業は新規追加分野(New!)です。現時点で特定技能2号の設定はありません
※ 全分野の令和6年から5年間の合計受入れ見込数:820,000人

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育成就労外国人が転籍できる条件は?

技能実習制度の問題点「失踪」と統計データ

令和5年の技能実習生の失踪者は前年比747人増の9753人に上り、過去最多となりました。失踪してしまう主な原因に現行の技能実習制度には「転籍ができない」点が指摘されてきました。

技能実習生の失踪事案の現状と対策について

外国人技能実習生は、来日前に母国の送り出し機関に対して手数料を支払います。法務省の調査によると、その金額は平均で約55万円(547,788円)にのぼります。この金額は多くの実習生にとって大きな負担となり、借金をしたり、親族から資金を借りたりして工面するケースが55%にも上ると報告されています。

しかし、来日後は原則として実習先の変更が制限されているため、労働環境に課題があっても転職が難しい状況です。このような状況が、一部の実習生による資格外就労や失踪の背景の一つとして指摘されてきました。

育成就労制度での転籍が可能となる4つの条件

育成就労制度では技能実習での問題点を踏まえ以下のように取り組むことが方針で示されました。

  • 「やむを得ない事情がある場合」の転籍の範囲を拡大、明文化するとともに手続きの柔軟化
  • 3つの要件を満たす場合には「本人の意向による転籍」も可能
本人意向による転籍:4つの要件
  1. 同一の機関で就労した期間が一定の期間を超えている場合。
    人材育成の観点から1年を超えれば転籍が可能とすることを目指しています。
    分野によっては1~2年までの範囲でその期間を延長することを可能にする方針で検討されています。
  2. 技能検定試験基礎級等及び、一定水準以上の日本語能力にかかる試験に合格すること
    実際の水準については各分野ごとに設定される方針です。
    現時点では技能実習基礎級の合格、かつ日本語能力A1ーA2程度が必要とされる方針で検討されています。
  3. 転籍先が育成就労を適正に実施する基準を満たしていること
  4. 転籍前と転籍先が同一の業務区分である事
特定技能

【特定技能】日本語試験完全ガイド - JFTとJLPTの違いから選び方まで

受け入れ機関側にとっての転籍の問題点

受け入れ事業者は、育成就労外国人の受け入れにあたり、事前研修や住居の準備など、相当な投資と体制整備を行います。そのため、長期的な人材育成を計画している事業者にとって、就労開始後の早期転籍は事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

特定技能制度においても同様の課題が指摘されており、就労開始から1週間程度での転籍事例も報告されています。

また、転籍に関する規制緩和については、以下のような課題が指摘されています:

  1. 賃金水準の高い都市部への人材集中
  2. 地方部における必要な労働力の確保
  3. 受け入れ事業者による初期投資の回収困難

これらの課題に対して、外国人材の権利保護と受け入れ事業者の安定的な事業運営の両立が求められています。

POINT

2027年の改正法施行に向け、現在、転籍前に受け入れ機関が支出した初期費用については、転籍後に正当な補填を受けられるようにするための仕組みが検討されています。

民間の職業紹介事業者は転籍支援事業に参入できない

育成就労制度における転籍の取り扱いについて、政府は慎重な検討を行っています。
2022年6月の法改正では、不適切な仲介行為を防止するため、以下のような対策が講じられました:

  1. 罰則規定の強化(不法就労助長罪の厳罰化)
  2. 監督体制の整備
  3. 不適切な仲介業者への対策強化

現在、育成就労制度における転籍支援は、以下の公的機関に限定して実施される方針で検討が進められています:

  • 管理支援機関
  • 外国人育成就労機構
  • ハローワーク(公共職業安定所)

このように、転籍支援の実施主体を公的機関に限定することで、育成就労外国人の権利保護と適正な制度運用の両立を目指しています。なお、当面の間は民間の職業紹介事業者による仲介は認められない方向で議論が進んでいます。

悪質なブローカー排除に対する取り組みと不法就労助長罪の厳罰化

外国人が不法な形で就労した場合、在留資格の取り消しや退去強制のリスクがあります。

一方、雇用主である受け入れ期間は不法就労助長罪が適用される可能性があります。これは、外国人の不法就労を手助けする行為を取り締まる制度です。

具体的には、従来の「懲役3年以下または罰金300万円以下」から「懲役5年以下または罰金500万円以下」となっています。(2025年6月から拘禁刑)

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育成就労制度における注意点

育成就労制度の対象分野については、以下の点に注意が必要です:

技能実習制度ではあったが育成就労制度では対象外となる分野がある

特定産業分野(16分野)であっても、国内での育成になじまない分野は育成就労制度の対象外になる可能性があります。また、現行の技能実習制度の対象作業であっても、特定技能1号の対象分野にならない分野があるので注意が必要です。具体的な対象分野や要件については、今後、検討を重ね順次発表される予定です。

分野ごとに求められる技能水準や日本語能力要件が異なる場合があります

特定技能制度では、産業分野ごとに必要な技能水準と日本語能力の要件が異なります。基本要件として日本語能力JLPT N4以上が求められますが、例えば介護分野では介護日本語能力検定試験の合格など、分野特有の追加要件が設定される場合があります。具体的な各分野ごとの要件については、今後、検討を重ね順次発表される予定です。

農業・漁業実情に応じた受入れ・勤務形態が検討されています

農業や漁業などの季節性のある分野では、収穫期や漁期など、季節によって必要な人手が大きく変動します。

そのため、育成就労制度では、繁忙期に合わせた期間限定の受け入れや、複数の農家・漁業者での共同受け入れなど、産業の実態に即した柔軟な勤務形態が検討されています。これにより、事業者と外国人材の双方にとって、より効率的な就労が可能となります。

*特定技能制度で派遣形態での受入れが認められるのは、現時点では農業と漁業の2分野のみとなっています。

育成就労制度移行に向けた準備

技能実習制度から育成就労への移行タイミング

施行日が定められた際にその前後の技能実習生(予定者)がどうなるかが示されています。

技能実習制度から育成就労への移行タイミング
  • 施行日前に入国し技能実習を行っている場合:引き続き技能実習を継続可能
  • 施行日前に技能実習計画の認定申請をしている場合:令和9年の施行日から3か月以内に開始することを内容とする技能実習計画に限り技能実習生として入国可能
  • 技能実習2号を良好に修了している場合:特定技能1号への移行を検討。再度、技能実習生は不可。

よくある質問

育成就労制度では、外国人が複数の分野で働くことはできますか?

育成就労制度では、人材育成の一貫性を確保する観点から、分野をまたいで働くことは現時点で認められていません。

育成就労制度では、家族の帯同はできますか?

原則として、家族の帯同を認めないこととしています。

技能実習を終了した人は、育成就労制度で再度来日して働くことはできますか?

過去に2年以上の技能実習を経験した方は、原則として育成就労制度での就労はできません。これは、技能実習の期間が育成就労の期間としてカウントされるためです。ただし、以下の場合は例外として認められる予定です:

  • 以前の技能実習の職種が、育成就労制度の対象分野に含まれない場合

なお、具体的な例外規定については、今後、政府から詳細が発表される予定です。

まとめ

2024年6月の「出入国管理及び難民認定法」改正により、2027年を目処に新たな「育成就労制度」が創設され、現行の技能実習制度は廃止されます。この新制度は、日本の深刻な人手不足を解消するために設立され、従来の技能実習制度に代わり、人材育成と確保を目的としています。育成就労制度は、3年間の就労を通じて特定技能1号相当の技能を持つ人材を育成することを目指し、技能実習制度や特定技能制度とは異なる特徴を持ちます。施行スケジュールは2027年の予定で、施行に向けた準備が進められています。また、新制度では転籍が条件付きで認められるなど、柔軟な対応が可能です。詳細な運用方法は今後、有識者や労使団体の意見を取り入れて決定される予定です。

代表行政書士
中尾幸樹

当事務所は神奈川県逗子市を拠点とする、国際業務・特定技能に強い行政書士事務所です。米海軍基地職員を兼務していることから、日米国際結婚に関する独自の情報提供も可能です。

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重要な注意事項
本記事は入管法に関する一般的な情報提供を目的としており、執筆時点での法令・運用に基づいています。
入国管理局の審査基準や運用は随時変更される可能性があり、また個々の事案により判断が異なる場合があります。

【免責事項】 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、記事の内容に基づく申請や判断により生じたいかなる結果についても、著者および運営者は一切の責任を負いません。具体的な申請手続きについては、必ず最新の情報をご確認の上、行政書士等の専門家による個別相談をご利用ください。