【特定技能1号】「介護」の概要と受け入れ可能施設(2024法改正対応)

特定技能1号介護
お知らせ

記事内では在留資格を「ビザ」と呼ぶ場合がありますが、ビザは本来「査証」=上陸許可なので、厳密には在留資格と異なります。

この記事を読むと分かること

  • 特定技能「介護」制度の基本的な仕組みと最新の制度改正内容
  • 介護分野で認められている具体的な業務範囲
  • 求められる技能水準と日本語能力の基準
  • 受け入れ可能な施設と要件
  • 受け入れ機関における人材育成と定着に向けた支援体制

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特定技能1号「介護」の基本情報

特定技能1号「介護」の基本的な仕組み

特定技能介護は、在留資格「特定技能」に基づく制度です。2019年4月の制度開始以降、介護分野における外国人材の受入れ実績は着実に増加し、2024年6月末時点で約3.6万人が就労しています。介護業界で働くにはいくつかの方法があります。一つがEPA介護福祉士(候補生)、もう一つが在留資格「介護」で働く方法です。それぞれの特徴は以下の通りです。

EPA介護福祉士との違い

EPA(経済連携協定)に基づき、日本の介護施設で4年間就労や研修をしながら、日本の介護福祉士の資格取得を目指す外国の方々を「EPA介護福祉士候補者」と言います。この制度は日本の労働力不足を補うための制度ではなく、日本で介護福祉士の国家資格を取得するのを目的すものです。日本と介護のEPAを結んでいる国は現在フィリピン、インドネシア、ベトナムの3か国となっています。

在留資格「介護」との違い

在留資格「介護」は、日本にある公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動と規定されています。介護福祉士の2024年1月の合格率は82.8%となっており、その内、外国人のEPA候補者の合格率は43.8%となっています。

特定技能1号の在留期間と条件

特定技能1号の在留期間は以下の通り定められています:

  • 在留期間:1年、6か月または4か月ごとの更新
  • 通算在留期間上限5年まで
  • 家族の帯同:基本的に認められない

※介護福祉士の資格を取得した場合は、在留資格「介護」への変更が可能です。その場合、在留期間の上限がなくなり、家族の帯同も可能となります。

2024年改正!特定技能「介護」制度の最新動向

2024年3月改正の重要ポイント

2024年3月29日の閣議決定により、以下の重要な改正が行われました:

  • 受入れ見込数を13.5万人に拡大(令和6年度から5年間
  • 特定技能所属機関の責務として地域における外国人との共生社会実現への寄与を明記
  • 各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れられるような施策の実施

特定技能で訪問介護が解禁!?新たな動き

2024年6月、厚生労働省は訪問介護への従事を認める外国人材の対象拡大方針を発表しました。ただし、実施にはEPA介護福祉士や、介護福祉士の資格を持つ在留資格「介護」で日本に在留する人に合わせるため介護職員初任者研修の修了等が条件となりそうです。早ければ2025年度からの開始が予定されています

特定技能介護の現在の受入れ状況(2024年6月時点)

  • 特定技能1号在留者数:36,719人
  • 主な国籍・地域:
    • ベトナム:8,970人
    • インドネシア:9,760人
    • フィリピン:4,092人

特定技能「介護」における就労可能な業務範囲

対象となる介護業務の具体的内容

特定技能1号の介護分野で認められる業務は以下の通りです(2024年10月現在):

  • 身体介護(利用者の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)
  • 付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)

「特定技能1号」介護で働くための3つの試験

特定技能1号で介護の現場で働くには技能水準日本語能力水準、さらに介護は介護日本語評価試験があります。

区分詳細情報
評価試験種別1. 介護分野における技能評価
2. 介護分野における日本語能力評価
対応言語アジア12言語に対応: 日本語をはじめ、東アジア、東南アジア、南アジア、中央アジアの主要言語で受験可能
応募要件• 年齢条件:原則として17歳以上(一部の国籍の方は18歳以上)
• 国籍要件:外国籍の方が対象
• 在留要件:有効な在留資格保持者(短期滞在含む)
• その他:同一試験の重複受験不可 合格後の在留資格については、別途審査があり、合格が資格付与を保証するものではありません
試験方式コンピューターを使用した試験システムで実施
出題形式技能評価:45題(制限時間60分)
言語評価:15題(制限時間30分)
※諸手続きの時間は別途
実施期間申込受付:2024年春季から2025年初春
試験実施:2024年4月中旬から2025年3月上旬
実施期間は2024年11月時点のもので、順次更新されます

介護技能評価試験

区分詳細
実施概要実施機関:プロメトリック株式会社
実施頻度:毎月定期開催
受験資格:17歳以上
試験方式:CBT方式(コンピューター使用)
試験内容試験時間:60分
問題構成: 学科(40問) 介護の基本原理(10問) 心身の理解(6問) コミュニケーション(4問) 介護実践技術(20問) 実技課題(5問)
技能水準:3年の実務経験に相当する知識・技能を評価
評価・結果合格基準:総得点の60%以上
受験料:1,000円程度
結果通知:試験終了時に即時表示
証明書発行:5営業日以内にオンライン取得可能

介護技能評価試験が免除される人

試験が免除されるケース

  1. 介護福祉士養成施設の修了者
    • 介護福祉士養成課程は、介護福祉の専門職として、介護職のグループの中核をなすもの。この課程の修了者はすでに介護の分野において一定の専門性・技能を備え即戦力として稼働させるための経験を有するとみなされるため、技能評価試験は免除されます。
  2. EPA介護福祉士候補者としての在留期間(4年)満了
    • 厚生労働省の定める受け入れ実施に関する指針に基づき、介護福祉士養成施設の実習施設と同等の体制が整備されている等の要件を満たした介護施設で日本語学習、介護福祉士国家試験の受験に配慮した適切な研修を受け介護分野の即戦力とみなされ試験は免除になります
    • 候補者全員が試験を免除されるわけではありません具体的な要件は下記の通りです。
      • 就労・研修を3年10ヶ月以上修了 かつ 直近の介護福祉士試験の結果で合格基準点の50%以上及び全ての試験科目で得点があること。
  3. 介護職種の技能実習2号修了
    • 介護職種の技能実習生として3年間を過ごし第2号技能実習を良好に修了した者については技能評価試験が免除されます。

日本語能力評試験

日本語能力水準の詳細

日本語能力水準については、以下2つの要件を満たす必要があります:

  1. 日本語能力試験に合格
    • JFTーBasic(国際交流基金日本語基礎テスト)
    • JLPT(日本語能力試験)N4以上取得
  2. 介護日本語評価試験の合格

日本語試験が免除されるケース

  1. 介護福祉士養成施設の修了者
    • 介護福祉士養成課程は、介護福祉の専門職として、介護職のグループの中核をなすもの。養成施設において4年間の実務的な研修を終えた者であり、日本語能力も備わっているものとされるため、日本語能力試験は免除されます。
  2. EPA介護福祉士候補者としての在留期間(4年)満了
    • 厚生労働省の定める受け入れ実施に関する指針に基づき、介護福祉士養成施設の実習施設と同等の体制が整備されている等の要件を満たした介護施設で日本語学習、介護福祉士国家試験の受験に配慮した適切な研修を受け介護分野の即戦力とみなされ試験は免除になります
    • 候補者全員が試験を免除されるわけではありません具体的な要件は下記の通りです。
      • 就労・研修を3年10ヶ月以上修了 かつ 直近の介護福祉士試験の結果で合格基準点の50%以上及び全ての試験科目で得点があること。
  3. 介護職種の技能実習2号修了
    • 介護職種の技能実習生として3年間を過ごし第2号技能実習を良好に修了した者については既に日本語能力が備わっているものとされるので日本語表会試験が免除されます。ただし、「介護職種・介護作業」以外の職種の人は、介護日本語評価試験は免除されないので注意が必要です。
特定技能

【特定技能】日本語試験完全ガイド - JFTとJLPTの違いから選び方まで

特定技能介護の受入れ可能施設

受入れ可能な介護施設の種類と要件

受入れ可能な施設は、介護福祉士国家試験の受験資格要件において実務経験として認められる施設であることが条件です。

特定技能介護における対象施設一覧

以下は、介護福祉士国家試験の受験資格要件において「介護」の実務経験として認められる施設のうち、特定技能1号(介護)での就労が可能な施設・事業の一覧です。

1. 児童福祉法関係の施設・事業
入所支援施設 ・知的障害児施設
・自閉症児施設
・盲児施設
・ろうあ児施設
・肢体不自由児施設
・肢体不自由児療護施設
・重症心身障害児施設
・障害児入所施設
通所支援施設 ・知的障害児通園施設
・難聴幼児通園施設
・肢体不自由児通園施設
・児童発達支援
・放課後等デイサービス
・児童発達支援センター
・居宅訪問型児童発達支援(※訪問系を除く)
・保育所等訪問支援(※訪問系を除く)
その他 ・重症心身障害児(者)通園事業
・肢体不自由児施設又は重症心身障害児施設の委託を受けた指定医療機関
2. 障害者総合支援法関係の施設・事業
入所・居住系 ・障害者支援施設
・共同生活介護(ケアホーム)
・共同生活援助(グループホーム)(外部サービス利用型を除く)
・福祉ホーム
・短期入所
通所・日中活動系 ・療養介護
・生活介護
・自立訓練
・就労移行支援
・就労継続支援
・地域活動支援センター
・日中一時支援
旧法施設 ・知的障害者援護施設(更生施設・授産施設・通勤寮・福祉工場)
・身体障害者更生援護施設(更生施設・療護施設・授産施設・福祉工場)
・精神障害者社会復帰施設(生活訓練施設・授産施設・福祉工場)
その他事業 ・身体障害者自立支援
・生活サポート
・経過的デイサービス事業
・在宅重度障害者通所援護事業
・知的障害者通所援護事業
3. 老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業
通所系 ・第1号通所事業
・老人デイサービスセンター
・指定通所介護
・指定地域密着型通所介護
・指定認知症対応型通所介護
・指定介護予防認知症対応型通所介護
・指定通所リハビリテーション
・指定介護予防通所リハビリテーション
入所・居住系 ・養護老人ホーム(※1)
・特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)
・軽費老人ホーム(※1)
・ケアハウス(※1)
・有料老人ホーム(※1)
・サービス付き高齢者向け住宅(※1)
・介護老人保健施設
・介護医療院
短期入所系 ・老人短期入所施設
・指定短期入所生活介護
・指定介護予防短期入所生活介護
・指定短期入所療養介護
・指定介護予防短期入所療養介護
4. 生活保護法関係の施設
対象施設 ・救護施設
・更生施設
5. その他の社会福祉施設等
対象施設 ・地域福祉センター
・隣保館デイサービス事業
・独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
・ハンセン病療養所
・原子爆弾被爆者養護ホーム
・原子爆弾被爆者デイサービス事業
・原子爆弾被爆者ショートステイ事業
・労災特別介護施設
6. 病院又は診療所
対象施設 ・病院
・診療所

※1 以下のいずれかのサービスを行う施設であることが条件です:

  • 特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型を除く)
  • 介護予防特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型を除く)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型を除く)

2025年からは訪問介護サ高住(サービス付き高齢者住宅)への派遣も可能になる見込みです。

  • 第1号訪問事業
  • 指定訪問介護
  • 指定介護予防訪問介護
  • 指定夜間対応型訪問介護
  • 指定訪問入浴介護
  • 指定介護予防訪問入浴介護
  • 指定訪問看護
  • 指定介護予防訪問看護

訪問介護業界では有効求人倍率が15.53倍と介護従事者が明らかに足りていない状況に陥っています。このような状況は必要な人へのサービスが滞り、結果、介護のために現役世代が仕事を退職するなどして、長期的に日本の生産性に大きく影を落とすと言われています。

特定技能所属機関が気をつける3つのポイント

特定技能介護制度を活用する上で、特定技能所属機関が気をつけなくてはならない3つの注意点は以下の通りです:

1. 介護施設における受入可能人数

特定技能1号外国人の受け入れには人数の制限があります。人数制限は法人単位ではなく事業所単位となる点に気をつけてください。

項目内容
受入れ人数の上限事業所ごとの日本人等の常勤介護職員の総数を超えない範囲
日本人等の範囲・日本人 ・永住者 ・日本人の配偶者等 ・永住者の配偶者等 ・定住者、特別永住者・介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士(特定活動)・在留資格「介護」で在留する者
*EPA介護福祉士候補生、留学生、技能実習生は含まれません

2. 介護分野における特定協議会への加入義務

令和6年6月15日以降、在留資格「特定技能」で外国人材を受け入れる法人は、地方出入国在留管理局での在留諸申請を行う前に、厚生労働大臣が設置する介護分野における特定技能協議会の構成員になることが必要です

3. 適切な待遇・労働条件、配置基準の確保が必須

特定技能1号外国人は就労開始と同時に職員とみなす扱いをしても問題ありません。

ただし、一定期間(概ね6ヶ月)、他の日本人職員とチームでケアにあたるなどして特定技能外国人の施設への順応をサポートし、介護ケアの安全性を確保する体制作りが求められます。

効果的な研修・教育体制の構築方法

受入れ機関には、以下のような体制整備が求められます:

  • 技能の向上に関する体系的な研修の実施
  • 日本語能力の向上のための支援
  • 介護の専門性向上のための教育プログラムの提供

生活支援と待遇面での配慮事項

特定技能外国人の安定した就労のために、以下のような支援を整える必要があります。

  • 適切な待遇の確保(日本人と同等以上の給与水準)
  • 住居の確保支援
  • 生活オリエンテーションの実施
  • 相談・苦情対応体制の整備

これらは特定技能で来日し就労する外国人が安定した環境の中で就労を行うのに必要な支援とされています。
受入機関は自身でこれら支援をすることもできますが、多くの受入機関はその支援の一部または全部を登録支援機関に委託しています。

特定技能1号介護分野の今後の展望

2019年に特定技能制度が始まってから5年。

特定技能では受け入れ企業にとっても様々な場面で利用が可能となっています。

  • 留学生から採用する
  • 技能実習2号から採用する(3年)
  • EPA介護士で試験に落ちてしまった人

以前までは、上昨日ような日本で働きたい、既に働いている事業に不可欠な貴重な戦力を、在留資格の制限で諦めるしかありませんでした。しかし特定技能はその穴を埋めることができます。技能実習では転職ができなかったが特定技能ならできます。EPA介護福祉士候補生であれば、特定技能で引き続き5年間滞在し介護福祉士国家試験を受けることも可能になり、事業者は安定した雇用を維持できます。

POINT

特定技能2号で介護分野が対象とならないのは、在留資格で「介護」があるためです。

まとめ

介護分野における特定技能制度は、以下のような方向性で発展が見込まれています:

  • 受入れ人数の段階的な拡大
  • 対象となる業務範囲の見直し
  • 地域における外国人との共生施策の強化

特定技能2号は当初、12分野のうち「建設」と「造船・舶用工業(溶接区分のみ)」の2分野のみが対象でした。しかし、2023年には介護を除く残りの9分野全てが特定技能2号の対象になりました

また、介護分野においても2019年の制度発足時には対象外とされた「訪問介護」が2025年には解禁の見通しとなっています。

地域住民との交流の促進をサポートするのは受入機関や登録支援機関の義務なので、これらの支援業務を行なっていけば必然的に地域レベルでも外国人との共生社会が近づいてくるでしょう。

参考資料・関連リンク

  • 出入国在留管理庁「特定技能1号における介護分野の業務区分」
  • 厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れに関する運用要領」
  • 「特定技能外国人受入れに関する運用要領」の運用状況」
代表行政書士
中尾幸樹

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